2019/05/02

Siegfried / ジークフリート


やっぱりシャーガーのジークフリート最高よね。ゴーキーのブリュンヒルデ以上にここまで三位一体が極まったジークフリートってなかなかいない。今まで知らなかったものに目覚める、ステージアップするというパルジファル的な要素が彼に合ってるんだろうなと思う。第1幕は高音の音程に不安定な部分がいくつかあって(ギアが合わなくて空回りする感じはいつもの彼らしくない)調子良くないのかしらと思ったものの、第2幕からは持ち直して(ジョルダンの助けあり)きっぱり鮮やかに歌いきった。最後の音は楽譜通り(ミュンヘンでのフィンケのようにcontre-utではなく)。ゴーキーはやっぱり本調子ではないようで、特に高音に厚みがなくパワー不足でヒラヒラ乾いた声を聴くのは辛かった。故にシャーガーとのバランスがいまひとつよくない。サリューの時の様子から自分でも納得のゆくパフォーマンスじゃなかったんだろうなと推察。この二人が絶好調でブリュンヒルデ&ジークフリートだったら圧巻だろうなー、聴いてみたいなー!
ミーメは歌唱的に文句なく上手いんだけど、個人的にはもっと素っ頓狂な声で半分狂っちゃったようなキャラクターで聞かせてくれる方が好きなので…。
ワルキューレの最後で打ち拉がれていたヴォータン、ジークフリートの出現に活路を見出したかのようだが、割とアクが抜けて淡々としてもいる。この曖昧なヴォータンをフォレが見事に表現。
ジークフリートとの最初で最後の対面シーン。槍を両手で頭上に掲げるのは”これを叩き折って行け”という餞でもあり、同時に神々と契約の世の終焉の柝を打たせて自分に聞かせるという雰囲気でもあった。
森の小鳥はブリュンヒルデ並みに不調なのか、バスティーユでのツァラゴワの囀りが今も耳に残っている耳にはどうしても小鳥に聞こえなかった。後宮からの誘拐のときにはもっとクリアでメロディアスな歌唱だった記憶。


オケが蘇ったようによくて、色彩感に富み、舞台と親密な緊張感があり、起伏とドラマ性のある音楽。(でもやっぱりVents、特にホルンに恒常的トラブルあるわ。ラインの黄金の時ほどじゃないけれども…)しかし第2幕のチャーミングな終わり方を聞かせてくれない観客どうにかして。カーテンが下り始めたら拍手がお作法な観客は今日日METに限らずどこの劇場でもいる。曲が最後まで終わってからカーテン下ろすように演出家は考えた方がいいかも。


Direction : Philippe Jordan
Production : Robert Lepage
Décors : Carl Fillion
Costumes : François Saint Aubin

Brunnhilde : Christine Goerke
Siegfried : Andreas Schager
Erda : Karen Cargill
Mime : Gerhard Siegel
Wanderer : Michael Volle
Alberich : Tomasz Konieczny
Fafner : Dmitry Belosselskiy
Oiseau de la forêt : Erin Morley