2014/03/31

L'Italiana in Algeri / アルジェのイタリア女 (Première) ① @Palais Garnier

リンドーロがシラグーサに変更で嬉しい驚き!!!夏時間移行でボンヤリしてたのに、一気にシャッキリした。
最初のアリアの途中でちょっと危ないところがあってヒヤッとさせられたが(喉に何かひっかかって声自体出しづらそうなことに!)、後は持ち直したので安心した。やっぱり彼のイタリア声で聴くロッシーニは最高。

この日はソリスト、コーラス、オケに融合感がなく、芝居の流れがつかえるような印象で如何にもプルミエールですと貼り紙をしたくなるようなパフォーマンスだったし、セルバンの演出は例によって「?」な部分が多々あったけれど、そーんなこと全部吹っ飛ばされるくらい楽しかった。ロッシーニ万歳!

それにしてもこのパッパターチという称号、ブルジョワ・ジョンティオムに出てくる称号ママムーシとまるきり同じだと思う。まさかアイディア拝借ということもないだろうけれど、扱いは一緒。この頃のヨーロッパ人のトルコや北アフリカの異文化を見る目はこんな感じだったのかと見るのも面白いし、意味のない称号を与えられて喜ぶ凡人というのは普遍的に笑いの対象になるのだな、と。


ダルカンジェロを舞台で見るのは初めてかしら?と思ったら前回ONPで歌ったのは2002年で私がオペラを観はじめる前だった。昨日の演技はROHでのエスカミリオのイメージを完全に覆す完璧なコミックぶりで、あの大笑いの半分以上は彼のおかげ。あの茹でただけのようなスパゲッティ、不味そうだったなー(笑)。
あれ?私は芝居を観たのか、オペラを観たのか?むむむ…。


RICCARDO FRIZZA  Direction musicale
ANDREI SERBAN  Mise en scène
MARINA DRAGHICI  Décors et costumes
GUIDO LEVI  Lumières
NIKY WOLCZ  Chorégraphie

ILDEBRANDO D'ARCANGELO  Mustafà
JAËL AZZARETTI  Elvira
ANNA PENNISI  Zulma
NAHUEL DI PIERRO  Haly
ANTONINO SIRAGUSA  Lindoro
VARDUHI ABRAHAMYAN  Isabella
TASSIS CHRISTOYANNIS  Taddeo

2ème loges de côté 2

2014/03/27

La Bohème / ラ・ボエーム ② (キャストB)


「アタクシ、ディーヴァ様、女王様、アンジェラ様☆☆☆、たったひとりで起承転結いたしますわよ!」と高らかに宣言しているようなゲオルギューのパフォーマンス(笑)。20年もミミ歌ってますからねー。もうロボット相手でもあの演技ができるわ、彼女。
でも音程が定まらないような感じなのはやっぱり声が衰えているからじゃないかしら。舞台裏からの”Amour!”、最後は自棄になって放り投げたような声だったし。
そしてあのブレスの音、すごく気になる…。あれは肺病で死にそうな人ではなくて400mランナーが走った後の息づかいですぞ!
いくらお芝居が上手でも、オペラなんだからやっぱりまず歌唱をしっかりしないといけないですよねー。それに、ああいう演技は相手との意思の疎通が感じられないので如何なものかと思うワ。

しかし、「貧乏詩人だけど”ボエーム”だぜ!ヒーローだぜ!」に全力投球のベチャワはそんなこと気にもしてなかったんじゃないかな。というか気づきもしてなかったりして(爆)!
彼はアタックとフラゼがよくてプロジェクションもあり、気持ちよく聞かせるけれど、ソットヴォーチェになるといきなり「…実は…私の方が…結核なんです…」と歌い出すんじゃないかというほど、歌詞を支えきれないような頼りない声であららーという感じ。上のバルコンの人にちゃんと届いていたかしら?

ムゼッタはツァラゴワの方がいい。声にハリと艶があって、身のこなしや歌い方にも合っている。…と思っていたら、後からディストリビューションを見返して驚いた!ムゼッタは前回と同じKELEだったのね!余りにも声が違ったし、演技まで違って見えたので同じ人とは思わなかった。今日の方が格段に良かったです。初日は相当調子悪かったのかな。(確かにツァラゴワにしては背が大きいなーと思ったんだけど…)

彼らをまとめるオレンの指揮、一歩踏み間違えるとスキゾフレニー的なピドみたいになりそうだなーと思いながら見ていたが、ボリュームのコントロールがよく、ソリスト達の声がすべて聞こえたのは良かった。
あぁでもカフェ・モミュスのシーンの雑踏、雪の舞う第3幕の冒頭など、情景描写が鮮やかだった。こういうヴィジュアル感のある演奏は大好き。

そうだそうだ、今日はすごく珍しくスフラーがいた。ONPでは習慣としてないから、あの箱があると気になってすごく目障り。前回はファルスタッフの時にあったかな(セットの一部だったかもしれない)?

Aキャストと比べて、Bキャストのパフォーマンスにはシンパシーを感じないのにレベルは高いなと感じた。Aキャストはロドルフォとムゼッタが弱くてバランス悪く、パナッシュもなく「あれー?」と終わってしまったけれど、Bキャストはソリストがピカッとしてる感じだったし歌唱的にもバランス良くて安定感があった。
”AキャストかBキャストのどちらかをもう一度観られます”と言われたらどっちにしようかなー、と考えたが結局「どちらも結構です」と言いそうな気がする。
プッチーニにはそれほど思い入れのない証明かもしれない。

ANGELA GHEORGHIU  Mimi
PIOTR BECZALA  Rodolfo
BRIGITTA KELE  Musetta
LUDOVIC TÉZIER  Marcelle
ANTE JERKUNICA  Colline
IGOR GNIDII  Schaunard


PARTERRE 8-14

2014/03/15

La Bohème / ラ・ボエーム ① (Première / キャストA)

なんだかパナッシュに欠ける初日のラ・ボエームだった。
第1幕なんてソリストみんなバラバラに歌っている感じなうえ、オレンの指揮もモッタリした感じでキレがないからTuttiの部分などゴチャゴチャでとても聴きづらい。
おまけに最後の"Amore!"でミミの声がひっくり返って「みんな最後までこの調子だったらどうするのよ?!」とウンザリしたくらい。いやいや幸いにもそんなことはなく、アグレスタはしっかり持ち直してほぼ完璧なミミを歌い演じきった。彼女には昨年のエルヴィーラよりもミミの方が声もキャラクターも合っているのではないかしら。グリゼットな面とと純粋な面が違和感なく彼女の中に同居していて巧いなあと思った。

ロドルフォ役のセッコの声はきれいなイタリア声だがパワーがなくて(ホフマンの時の方が力強かった)テジエとのバランスが悪い。私、第4幕冒頭のデュオが大好きなのに、いまひとつ溺れられず残念…。
そしておそらく歌い慣れているのだろう、情熱的な部分は頭でコントロールされたように、さらりと歌い流す部分はルーティンワークのように見えて(聞こえて)しまい、あぁ巧いなと頷けても感動からは距離のあるパフォーマンスだった。それにしても相変わらずホフマンの時みたいにヨレヨレだわね、このヒトは(笑)。

ムゼッタの声は第2幕では表面が荒れたようで美しくない上にどの音を歌ってるんだかハッキリせず、練習不足かしらと訝ったほど。それでもしんみりとした第4幕では無理なく繊細に歌えていたし、演技も自然だったように思う。パリアッチでネッダを歌った時にはもっとツヤと張りのある声だったので、今日は調子が良くなかったのだと思いたい。次回に期待。

テジエのマルチェッロが歌唱の面で秀逸なことには疑いがなかったので(贔屓目かしらー?)ミュンヘンで役者に豹変していた彼の芝居をまず楽しみにしていたのだが、このマルチェッロのディレクションは(以前の)彼の躊躇いがちな演技そのものではと思ったくらい、見ていて無理なく自然。エンリーコやドンカルロでヒシヒシと感じた冷徹さは姿を消し、暖かさを感じさせるあの深みのある声(マルチェッロとしては人情味溢れる声と言った方がいいかも)!


オリジナルから年代を100年ほどずらした、久しぶりの写実的によく作り込まれたセノグラフィとクラシックな演出。まるでお芝居を観ているような演出が楽しめた。今時あまりこういうディレクションを与えられることもないだろうし、演じている方も楽しかったんじゃないかな。結構みんな自然な感じだった(特にテジエ!ちょっとオヤジ風味が入った若者だったけど)。今日で93回目のジョナサン・ミラーのこのmesも今シーズン限りで来シーズンはNPなんだわー。

DANIEL OREN  Direction musicale
JONATHAN MILLER  Mise en scène
DANTE FERRETTI  Décors
GABRIELLA PESCUCCI  Costumes
GUIDO LEVI  Lumières

MARIA AGRESTA  Mimi
STEFANO SECCO  Rodolfo
BRIGITTA KELE  Musetta
LUDOVIC TÉZIER  Marcello
ANTE JERKUNICA  Colline
IGOR GNIDII  Schaunard


PARTERRE 13 29-31

2014/03/11

Die Zauberflöte / La Flûte enchantée / 魔笛 (Première)



魔笛の初日、久しぶりにすごく楽しい芝居を観ている感じ!
バーデン・バーデンと同じ演出だが、そこここに変更がある。登場の仕方、ピアニカは消滅等々(他にもあるはずだから後で録画を観てチェックしよう)。

これは本当に観て聴くべき魔笛!目にも耳にも心にも!バーデン・バーデンの公演を録画で何回か観たとはいえ、そして実際に観るのが何より、と判ってはいても、ここまでjubilatoireだとは!

ザラストロのゼーリヒを要にとてもよくバランスの取れた理想的なソリスト達(モノスタトスが軽過ぎるような物足りなさはあったが)、彼らは芝居も巧く、演出の力もあって観客をあっというまに魔笛の世界に引き込む。
パパゲーノが客席からパンフルートを吹きながら登場する時がその瞬間だ。歌い手が客席から登場という演出は珍しくもないが、観客も魔笛の世界観の中に含みこまれ(ライティングが効果的)、それが至極当然のように感じられる。そして最後には私たち全員が白い服になってinitiésの仲間入りを許されたような錯覚にとらわれ、終演時のあの喜びに満ちたホールの雰囲気(バスティーユでは稀な気がする)をつくりあげているのだろう。

カーセンもジョルダンもみーんな裸足(笑)

夜の女王のアリア、オペラ好きでなくても絶対知っているこのアリア、メロディーが流れ始めたらホールの空気がサーッと変わって、観客が前傾姿勢で「…くるぞ…くるぞ…」と待ちかまえている雰囲気(笑)。ロールデビュー、かつポストドゥセで嘱望されるドゥヴィエル(20年前カーセンがエクスで魔笛を演出した時に夜の女王を歌ったのがドゥセで彼女も同じく28歳だったそうだ)、ONP初登場だし大役に緊張していたと思うが(第1幕のアリアでは表面こそ柔らかさを纏っていたが、その下の硬さがありありと感じられた)驚くべきピアノの美しさと滑らないコロラチューラ(第1幕のアリアのトリルも)で乗りきり、大きな拍手を受けていた(復讐のアリアの後はすぐに下がってしまうので観客は見えない彼女に拍手をおくるわけだが)。最高音からの部分(ファ・ド・レ・シ)の2回目を正しい位置に置ききれなかったところは今後の課題。

誰を助けるかによって、その人物と同じ衣裳になる3人の男の子、今まで観てきた魔笛の中で迷わず1番をつけたい!彼らは将来どんなソリストになるか(ならないか)楽しみだ。


そしてオーケストラの音色の軽やかさ、爽やかさ、室内楽的なインティメートな音とそこに効果的に流れる透明感のあるシンフォニックな響き(バルコンでどのように聞こえたかは判らないけれど)!プルミエールなのでそこここに微妙なズレがあったけれど、回を重ねるにつれて改善されて行くでしょう。あと2回観るけれど、最終回も観たいので要検討。これ、どこかが録音しないのかしら?!するべきだわー!

Philippe Jordan
Direction musicale

Robert Carsen
Mise en scène

Michael Levine
Décors

Petra Reinhardt
Costumes

Robert Carsen / Peter Van Praet
Lumières

Martin Eidenberger
Vidéo

Ian Burton
Dramaturgie

Patrick Marie Aubert
Chef de Choeur

Pavol Breslik

Tamino
Eleonore Marguerre

Erste Dame
Louise Callinan

Zweite Dame
Wiebke Lehmkuhl

Dritte Dame
Daniel Schmutzhard

Papageno
Regula Mühlemann

Papagena
Franz Josef Selig

Sarastro
François Piolino

Monostatos
Julia Kleiter

Pamina
Sabine Devieilhe

Königin der Nacht
PARTERRE 8-14