2013/03/10

Die Walküre / La Walkyrie / ヴァルキューレ ②(2013年3月10日)

少し霧がはれたので写真を撮ってみたが、それでもかなり白っぽい。
前回はパーテールの5列目で観ていて、舞台上から押し寄せるスモークに「ぎゃー、すごいスモーク!!!」と驚いたが、プルミエバルコンから見たらもっとすごかった。
パーテール全体が霞んで座っている観客の姿が見えないくらいの濃霧である(笑)。

何だかこう全身がオレンジゼストのピールになったような気分!前回より3倍くらいの陶酔感!幕がおりるたびに「あー、このまま続けばいいのに」と思った。終演直後にもう一度最初から観たい気持ちに(今日が最終日とはまったく残念…)。
ラインの黄金ではヴォータンらしさの見えなかったマイヤーが、今日は声のプロジェクションこそいまひとつなところもあったけれど、ブリュンヒルデとの別れのシーン、最愛の娘を思いやる気持ちとその娘と永遠に別れなければならない痛恨の思いを暖かみのある声で語るように歌い、観る者の心に沁みるようなパフォーマンスを見せてくれた(4ヶ月後の今でも思い出すと目が潤む)。娘をもつお父様方は涙なくしては観られなかったのではないだろうか。
ブリュンヒルデも前回は具合が悪かったに違いない、と思わせるほど元気溌剌としていてなかなか説得力があった。声の豊かさはあまり感じられないけれど、全体的にみて満足だった(満点のブリュンヒルデはそうそうどこにでもいるものではないし)。
ジークムントは今日もすばらしく心に響く歌唱と演技(剣を持って立ち回るところは腰が引けていて全くの臆病者のように見えて少しいただけないが)。最後のカーテンコールには出てこないので比べられないけれど、第1幕後のカーテンコールでの拍手は最後のジョルダンを上回っていたように感じられた。
しかしやっぱりあのジョルダンの煌めくような明晰なワグナーが…!ワグナーらしくないと感じる人もいるだろうけれど、ワタシは好きなのよ、こういうワグナーが!!!

*アントラクトの時、ピットでオーボエの人がチェネレントラの序曲のソロを何回も何回も練習していてワグナーとは全く異った雰囲気を漂わせていたのが可笑しかった。
*この直前にテレビでスカラ座の公演を観てしまった(何回目だろう?)。音楽は同じなのに、視覚的にあまりにも違いすぎてとても同じオペラとは思えない。

2013/03/05

La Cenerentola / ラ・チェネレントラ @Palais Garnier


□3月5日(火曜日)□
金曜日より良いパフォーマンスであることを祈って出かけよう!
今日のシラグーザはかなり好調だった様子(1か所階段を踏み外したようなところがあったが)。al coreのreのところを上にいっていたし。金曜日に比べるとみんなリラックスして歌っていた印象で、格段によかった(saufティスベ)。アリドーロは佇まいや身のこなしに相変わらず落ち着きがなくて、彼も従者のように見えてしまうのがちょっと難だろう。
アンジェリーナも別人が歌っているのかと思うくらい、みずみずしくツヤのある声で音も外さず美しい歌唱を披露してくれた。でも最後の音は苦手意識があるのだろう、金曜日と同じになってしまい残念。ここまで素晴らしいパフォーマンスを続けたのに最後の最後で興醒めとなるのは観客にはもちろん、マルフィ本人にとってもハートブレイキングなことだ。ディドナートもガナッシもここでこんな声出さない…。
それにしてもこのシリーズはやっぱりカンパネッラの指揮で聴きたかったとつくづく思う…。
アンフィ前方中央の席、コスパは最高だがうるさい客が多くて閉口する。今日も携帯が何回も鳴るし、あちこちでヒソヒソ喋ってるし、足でカツカツとリズムとってる人がいるし(アンフィの床は木なので)、ウィンドウブレイカーみたいな上着をひっきりなしにカサカサしてる人、ラミロとアンジェリーナのデュエット中ずーっと咳してる人…。

□3月8日(金曜日)□
オーケストラ(&指揮者、多分)が前の2回に比べてずっと軽快になっている。でも何となくロッシーニに聞こえないという不思議。先シーズンのマルコのセビリアの理髪師は正にロッシーニという感じだったのに。
隣に座ったマダムはペルーの人で、私が「フロレスの声はPatrimoine culturel immatériel de l'humanitéにするべきですね!」と言ったら大変誇らしげで満足そうに何度も頷いていた。私が持っていたオペラグラスを見て「そのオペラグラスはずいぶん小さいですけど、舞台はどう見えますか?」と尋ねられたので「第2幕の間お使いください」とすすめた。私はこれから後も観に来るし、実際このオペラグラスはとてもいいので間に置きますからとお好きな時にどうぞと使ってもらった。
おじいちゃま、あるいはおばあちゃまが孫を連れてきているのが目立ってバカンスだなーと実感。行儀のよい子もいれば、興味もないのに無理に連れて来られて飽きたのか、ムムム…な子もいる(祖父母の態度も然り)。

□11日(月曜日)□
回を重ねるごとにダンディーニが面白くて彼から目が離せない!ノヴァロのよさはまさにキワモノ的偽プリンスとしての立ち姿と身のこなしをベースにした芝居の上手さ。ちょっとした首の傾げ方やクルリと振り向くときの指先にも偽プリンス感が漂っているので可笑しくて可笑しくて(笑)。すらりと細身で衣裳がよく合い、エクストラヴァガントなカツラとメイクもピッタリ!衣裳&カツラが破壊的に似合わないシラグーザと対称的だが、歌うとなるとこれはもうシラグーザに敵わないのは仕方がない。

今日はオーケストラの音が今までとは違って聞こえて不思議だった(席に違いはない)。今までよりもまとまった統一感がある音色に感じた。あまりロッシーニっぽく聞こえないという点では同じだったけれど…。やっぱりこれは指揮者の趣味ってコトなのだろう。去年のマルコの理髪師みたいにテンポが軽快でシャキシャキッとしたロッシーニが聴きたかったとまた思ってしまった。
今日の隣人はモスクワからの女性。彼女もオペラグラスに興味を持ったようだったので、時々貸してさしあげた。アントラクトにお喋りしていると、ここはヴェスティエールにコートを預ける観客が少ないと言って驚いていた。「邪魔じゃないですか?ボリショイ劇場では持って入れませんよ」だそうだ。そして「パリは物価が高いですね」とも。モスクワはずっと物価が安いらしい。でも以前に比べて随分上がったんじゃないですか?と尋ねると、深く深ーく頷いていた。ボリショイ劇場のチケット入手は難しいことではないけれど、バレエはオペラよりずーっと高いからそれが難しい問題なんですよ、と笑いながら語っていた。

□16日(土曜日)□
今日だけ違う指揮者だったが、オーケストラが意外なほどよかった。ソリストもコーラスも指揮者への慣れがないのでいつもより合わせる意識をしていたのだろうか。歌とオーケストラの方向性が合うと、聴いていてこんなにも気持ちがよいモノなんだと改めて実感。今日1回だけなんて残念すぎるので、残りの公演も全部彼が振って欲しい!これは月曜日も感じたけれど、オーケストラの音が違う。滑らかで音にほどよい厚みがあり、バランスの取れたとてもいい演奏と思った。

□19日(火曜日)□
今日の指揮はまたフリッツァなんだろうなぁ(ええ、残念ながら彼でした)。
アリドーロがお疲れ気味な感じだった。
セレナ・マルフィは今日も最後の高音を失敗したが、彼女はこれからが楽しみな歌い手だ。今はおそらく感情と技術のコントロールがしきれずに鋸の歯のようなパフォーマンスになってしまうのだと思う。これから経験を重ねるうちに自信もついて最後の音もちゃんと出せるようになる、きっと!

□25日(月曜日)□
今夜はチェネレントラの最終日。思うところあって今月だけで7回も観てしまったので、食べ過ぎでお腹いっぱいの時と同じような感覚。もうチェネレントラは当分いいや…、というのが正直なところ。しかしあのダンディーニがもう見られないと思うとちょっと残念でもある(笑)。
今回のシリーズで初めて身体中を小さな粒子がパーッとかけめぐるような感覚のラミロの歌唱があって「あぁこういう感覚が味わえるのはオペラならでは!」と大変に満足。
でも、また指揮とオーケストラと歌唱(コーラス&ソリスト)のテンポが合わないところが何か所かあった上、オケの音もシリーズ最初の方の音に戻ってしまったようで今ひとついただけない感じであった。最終日で合わないというのはちょっと(いや、かなり)問題ではないだろうか。
ドン・マニフィコは今夜で解放されるのが嬉しいのか(笑)何時にも増してはしゃいでいるように見えて可笑しかった。自分の好きなように演じている感じ、と言うよりこの人はこれが演技というよりも普段からこういう人なんじゃないかしら?というのが垣間見えたようにも思えて微笑ましく見えた。ここでこれが微笑ましく見えるソリストと、興醒めになるソリストの差はどこから来るのだろうか…?
アリドーロの歌は結局最終日までイタリア語に聞こえず。もっとイタリア語のディクションをしっかりお勉強しましょう!

1ヶ月間テーブルの上に置いてあったチェネレントラのプログラムを書架にしまう。表紙の裏に挟んであるチケットとディストリビューションの厚みに「…」。もうこんな100本ノックのような無茶なまねはしませんよ!(多分…)

*チェネレントラは1ヶ月に10回の公演があったうち7回も観に行ったうえ、他のオペラやバレエ、コンサートにも行ったのでちょっと疲れてしまった(なんと贅沢な疲労なことか…)。

2013/03/02

Falstaff / ファルスタッフ(2013年3月2日 @Opéra Bastille)




マエストリの素晴らしいこと!!!ファルスタッフを歌い演じるために生まれてきたか、あるいは役柄と自らの可能性を知り尽くしているとしか思えないパフォーマンス。たっぷりした質感の、届く声でのピアニシモからホールを満たすフォルテシモまで自在のコントロールと、感情を細かく伝える声のニュアンスの上手さに演技の上手さが加わって、今最高のファルスタッフではないだろうか。
次点はナンネッタ役のツァラゴヴァ。私としてはめったにないことだが、声の美しさにただただ感動。フェントンのファナーレは他のソリストに比べて力強い声ではないけれど、ナンネッタのBF役としてはピッタリ。
コメディなのに威風堂々な演奏で、ワグナー風な音の印象を受けたのが面白かった。イタリアのコメディなんだからもう少し弾けた感じ、あるいはヴェルディの最後の作品だからもっと肩の力を抜いた感じの演奏でも楽しかったと思うのだけれど。コメディ×コメディでtoo muchにならないようにという指揮者の意図かもしれない。
カイウスのラウル・ヒメネスの輝くような声がスポットライトのようにとてもいいアクセントになっていた。彼の若い頃のアルマヴィーヴァを生で聴いてみたかったとしみじみ思う。
やっぱりこういうオペラはプルミエバルコンの方が音(オーケストラ&コーラス)がよく聞こえる。歌手の表情や細かい演技等々はオペラグラスがないと見えないけれど。
ファルスタッフはコメディア・リリカで「うわー、感動!」みたいなシーンはないけれど、鑑賞後にとてもスッキリ軽快な気分になるのがいい。

Daniel Oren
Direction musicale
Dominique Pitoiset
Mise en scène
Alexandre Beliaev
Décors
Elena Rivkina
Costumes
Philippe Albaric
Lumières
Patrick Marie Aubert
Chef de choeur

Ambrogio Maestri / Sir John Falstaff
Artur Rucinski / Ford
Paolo Fanale / Fenton
Raúl Giménez / Dottore Cajus
Bruno Lazzaretti / Bardolfo
Mario Luperi / Pistola
Svetla Vassileva / Mrs Alice Ford
Elena Tsallagova / Nannetta
Marie-Nicole Lemieux / Mrs Quickly
Gaëlle Arquez / Mrs Meg Page

Orchestre et choeur de l'Opéra national de Paris

1er Balcon 3 10-12

2013/03/01

La Cenerentola / ラ・チェネレントラ(2013年3月1日 @Palais Garnier)


アンフィからは舞台は遠いけれどシャンデリア&シャガールが間近に!
さてさて、去年の7月から席を確保して楽しみにしていたチェネレントラ月間の第1回目。ワクワク♡
何だか予想していたのと雰囲気が違うなぁと思ってディストリビューションを見たら、”ガーン”指揮者が違う!カンパネッラのはずが、12月と同じフリッツァだなんて…ショック!
それにしても、ちょっと、いや、全然まとまりのない舞台だ。ソリストはそれぞれ勝手に自分のパートを歌っている感じだし、オーケストラとソリストも所々合わないことがある。今日がオプチマの日じゃなくてよかった…もしそうだったらテーブルをひっくり返していたに違いない(テーブルなんかないけど)!
シラグーザはよかったけど(でも贔屓目に見て70%というところ)、他のソリストが不安定すぎる。酷かったのはアンジェリーナのセレナ・マルフィ。驚くほど美しい声を出したかと思えば音を外し、錐のように尖った高音を連発し、最後の音はニワトリの首を絞めたようだった。タイトルロールがこんな出来じゃダメでしょう(怒)!
クロリンダのジャネット・フィッシャーは声が薄っぺらくてカサついていてボリュームがない(その代わり演技は大はしゃぎだった…)。セビリアの理髪師の時よかったのは出番が少なかったからかと疑いたくなる。ティスベのOnciouiuはかなり隠った声質で溌剌とした明るさに欠ける…。
アリドーロのフランソワ・リスはH&Aの頃に比べて声に密度がぐっと増したように聞こえるが、アリドーロは彼のキャラクターには合わない気がする(今後マッチするようになるかもしれないが)。どう聞いてもsapientissimoという印象からはほど遠く、落ち着きのない身のこなしにもそれが見えない。イタリア語のディクションがあまり良くないのも残念なところ。
その中でドン・マニフィコのシモーネ・アライモがいちばん安定していた。カーヴのシーンの終盤で「あれ?ちゃんと歌ってる?」というところがあった意外は、コントロールもよかったし、コミックな演技がオーバーでなく面白い役者でもあった。ダンディーニのリッカルド・ノヴァロは、んー…ちょっと保留としておく。
それでもやっぱりロッシーニをイタリア人のソリストで聴くのは気持ちがいい。
カプリッチオ以来のアンフィで悟った。一列目の中央部だとあんなによく見えて聞こえるのにこの値段というのは、背中に幅の狭い横板を押し付けられ、脚も動かせないという苦行がついてくるからなのである。小柄な私はそれほど気にならないが、ちょっと大柄な人だったら実際のところつらいだろうなと思う。
ハラハラしながら聴いたので、心を落ち着けるためにFFGのリストを聴きながら帰ってきた。効果抜群だった(笑)。

Riccardo Frizza (les 27 février, 1er, 5, 8, 11, 13, 19, 21 et 25 mars) / Giacomo Sagripanti (16 mars)
Direction musicale
Jean-Pierre Ponnelle
Mise en scène, décors et costumes
Grischa Asagaroff
Réalisation
Michael Bauer
Lumières
Alessandro Di Stefano
Chef de choeur
Antonino Siragusa : Don Ramiro
Riccardo Novaro : Dandini
Simone Alaimo : Don Magnifico
Jeannette Fischer : Clorinda
Cornelia Oncioiu : Tisbe
Serena Malfi : Angelina
François Lis : Alidoro

Orchestre et choeur de l'Opéra national de Paris



Amphithéâtre 23