パルジファルを聴き終わると、それが録音であってもなんとはなしに魂が軽くなったような気分がする。ウェルザー・メスト率いるウィーンオペラであれば、その気分はいかばかりであろうかと席を手配してからずっと心待ちにしていた今回のパルジファル。
その期待はミーッリッツの演出にすべてぶち壊された。えぇ、救済されるどころか呪いをかけられたようで怒りを感じましたよ!
これまでも意味不明だったり「演出としてこれはありえない」と言わざるをえないような演出も観てきたけれども、観客の視覚にダメージを与えるような演出は見たことがない。
それは第3幕で洗礼と聖金曜日の奇蹟のシーンの直前、舞台上から大きな四角いパネルが降りてくる。それには縦に8個、横に10個の大きなライトがつけられていて、舞台空間の中央でパネルの降下が止まるとその80個のライトが一斉に点灯してホール中を照らす。その光の強烈なことといったらまるで太陽を80個見るのと同じ位だ。私はミッテルロッジの1列目中央という願ってもない良い席だったが、パネルはその真正面にあり、もちろん光が眩しくて何も見えないし(周囲の人もみな目を手で覆っていた)80個のライトの熱さまで感じるというすごさで、落ちついてオペラを楽しむどころの話ではない。
そしてその光の攻撃はその場面だけにとどまらないのだ!!!
ライトが消えて熱も引き、パネルが上がっていっても目がくらんでいて舞台などよく見えない。ようやく目が暗さに慣れたと思ったら、今度はまばたきをする度に80個の黒い点が並んだ長方形が3つほど、ライトの残像が見えるわけですよ!!!
こうなってしまうともう全然舞台に集中できず「えー、どうして、なんで?」と呆然としているうちに私がいちばん愛する、聖金曜日の奇蹟をグルネマンツが歌い上げるシーンなどもスルスルと過ぎてしまい、やっと残像が消えたのはパルジファルがアンフォルタスの傷を癒すシーンだった…。
こんなことって、ありえない。
絶対許せませんとも!今こうやって思い出して書いてみても黒い怒りがフツフツとわいてくる。次に素晴らしいパルジファルを観るまで、この呪いは解けないにちがいない。凶器のライトパネル、午前中にバックステージを見学した時に撮った写真に写っていた! |