2013/06/23

Siegfried/ジークフリート


1回観れば満足だろうと考えていたジークフリートだったが、ミラノでヴァルキリーを観た後でジークフリートを観るのは道理じゃないかとチケットを手配。

作品としては、ジークフリートがノートゥングを鍛え直し、ファフナーを倒し、ブリュンヒルデを目覚めさせる、というたったこれだけの簡単極まりないストーリーなのに、なぜあれだけこねくり回したシナリオになっちゃうんだろうか…。
まぁリングはラインの黄金はさておき、後の3作品は既に語られたことを何度も繰り返すというシステムになっているから仕方がないと言えば仕方ないけれども。
ここで何故既に知った事実を同じライトモチーフを使って繰り返し繰り返し聞かされて飽きないのか、という疑問も浮かぶが、ここがヴァグナー好きとヴァグナー嫌いに分かれる分岐点となるのだろう。何回か聴いているとそのメロディーの意味するところが理解できるという事実に快感を覚える人はヴァグナー好きになるだろうし、くどくて聴いていられないという人は嫌いになるだろうから。




さて今日の公演はと言えば、4月の印象がそっくりそのまま甦ってきたような感じだった。ジークフリートなだけに、出番の多いケールのダメさ加減が異様に目立った公演となってしまい、残念。
いくら声がいいとは言っても、プルミエバルコンの1列目に聞こえてこないのではお話にならない。ヴァルキリーでジークムント役だったスケルトンをジークフリートに据えるべきだっただろう、とも考えたけれど、このプロダクションの、この救い難いほど能天気なジークフリートはケールのニンにぴったり合っている。
そしてスケルトンでは彼の持つかすかな暖かみのある陰が役を嘘っぽくしかねないということに思い当たった。難しいですね、ジークフリート。

彼が全くダメなので、舞台上は全体的に要の緩んだ扇のようなイメージ。
第3幕でリンダ・ワトソンがキリリと締めても時既に遅しで取り返せない感じだった。ワトソンはこの間の神々の黄昏ほどのパフォーマンスではなかったが残念と言うほどでは全くない(前回が非常に良かったので)。

でも、いい席を手配して痛い脚を引きずって出かけて大損だったかと言うとそうではなく、やはりオーケストラbyジョルダンのパフォーマンスを充分楽しんできた。
特にブリュンヒルデが目覚めるところの弦の細やかさなど、鳥肌モノの素晴らしさ。全体的にみると神々の黄昏で感じられたレベルではないなぁと感じられたのも事実であるが…。

それに今日は2回のアントラクトにそれぞれおやつがついていて、それも楽しかった(笑)。

おやつ引換券


1回目のアントラクト

2回目のアントラクト

2013/06/18

Die Walküre/ワルキューレ(@Teatro alla Scala)

席から見たステージ
うぅむ、がっかりとは言わないまでも、感動できるパフォーマンスではなかった。
何かトラブルがあるのかもしれないと思わせるような出来である。これだったら明日のバスティーユのONP byジョルダンのヴァルキリーの方が多分レベルが高い(観られなくて本当に残念...!)。

初スカラ座だったので、初めてスカラ座オケの音をスカラ座で聴いた。
「こういう音なんだ!」というのが第一印象。音の印象は、クルミ、ノワゼット、アーモンド、干しアンズ、厚く落ち重なった秋の枯葉(よく乾いて陽が当たり、いい香りがする)。ロッシーニやヴェルディでもこういう音なのだろうか?
また席の位置のせいか、あるいは舞台装置のせいか、ソリストの声が立ち位置によって驚くほど違って聞こえる。アヴァンセーンに出てくると非常によく響き渡るが、中央付近に下がるとずいぶん遠く感じられるのだ。
いちばん気になったのが、オケに統一感がないこと。まるで指揮者が3人(弦、木管、金管)いて、なんとか合わせているように聞こえる。バイオリンとチェロまで合わない時がある。バレンボイムは音の強弱とテンポの緩急を一瞬に、かつ極端に変化させるが、それに全体がついていかない(いけない?)のに非常に驚いた。初めての指揮者でも初めてのレパートリーでもないのに!
いちばん酷かったのは第二ホルン(多分)が譜めくりの間違いをしたとしか思えないようなミスをし、しかも本人はそれに気づかず隣の奏者に腕を引っぱられて止めたという事。万一譜めくりを間違えても音楽を聴いていればこんなことが起こるわけがない。その後演奏が進む中、ホルンの奏者たちはしばらく何やら話し合っていた。
それでも第一幕は悲劇をベースにした不安定で儚い一瞬の幸せと歓びに至るシーンなのでその雰囲気に合っていたと言って言えないこともないが、それは意図して成功したときに言えるコトではないかとも思う(不幸中の幸いとも言えるか…)。でもそれはヴォータンの告別のシーンに合うものでは決してない。

ヴォータンと言えば、この日のパーペ…。高熱でもあったのではないかと疑いたくなるようなパフォーマンス。彼のパフォーマンスについてのみ言えば、落胆させられたとはっきり言える。声の質自体に問題があったようには聞こえなかったが、プロジェクションはOKギリギリのところ(いや逆にギリギリのところで落第か)、プレゼンスには疲労感が絶えずまとわりついている。神々の長としての威厳とオーラなど望むべくもない。

ジークムントのオニール、ジークリンデのマイヤー、歌唱と演技の若々しさに決定的に欠ける。予定調和の安定路線をいくようなパフォーマンスで不安なく聴けるが、目の前で繰り広げられるドラマ的なテンションが感じられない。オニールは動きにキレがないのだから、それをカヴァーする何かを工夫したほうがいいのではないかと改めて思う。

ブリュンヒルデのテオリン、最初の部分で声が硬く、高音をピシッと出すのに無理をしているようで「不調?!」と疑ったが、その後は復調して(でも絶好調ではなかったような…)ソリッドな歌唱を披露してくれた。元気が良くヴォータンお気に入りの跳ねっ返り娘をよく演じていた。
最初のヴォータンとの隙のないコンプリシテ、甘えるような可愛らしい娘の面を見せたかと思うと、今まで疑った事のなかった父親の指示を疑いを抱きはじめ、それに背くことを決意するまでの心の迷いなどが彼女の強いキャラクターに巧くのってとてもよく表されている(シュテンメも秀逸だが、彼女は盤石の強さはそれほど感じられず、割とフェミニンな印象)。役者的には今日の一番。

安心して聴いていられたのがフリッカのグヴァノワ。そんな彼女でもオーケストラと合わない箇所があったのだから、何か問題があるとしか思えないのだ。

そういうわけで全体的にソリスト達が歌いづらそうな印象で、舞台上とピット内の間に融和したハーモニーがあまり感じられないという不思議…。ここは天下のスカラ座だというのに、私の方が何か変調を来しているのではないかと疑いたくなる。
既にガラガラのピット!
カーテンコールでバレンボイムが現れる前にオーケストラのメンバーの約3分の1は既にピットを去っていたことにも驚かされた。同じ日のバスティーユではオーケストラが舞台上でジョルダンと共に拍手を受けていたというのに。師匠と弟子でこんなに差があったとは…!
半歩下がってそっぽ向いてるパーペ…

終演後、ギャラリー内のレストランで食事をしているとテラスの入口で十数人で食事をしていた人々が拍手をするのでそちらを見ると、バレンボイムがその他3人とやってきたのだった。
拍手にも小さく頷いただけでほとんど反応を示さず、サービスマンに何か話して席についた。その直後、ピンクとベージュのヨレヨレであまり趣味のよくないシャツを着た湯上がりみたいなオジサンが若い女性とくるなーと思ったらパーペ。彼らは6人一緒にテーブルについたが、他の4人が喋っているのに、バレンボイムとパーペは端に向かい合って座り、何やら硬い表情でそれほど話に花が咲いているようには見えず。今日の公演の様子をコンファームするように見えて仕方がなかった。
もうひとつ、第一幕が終わった後バレンボイムがコンサートマスターとかなり長い間話していた。あれは何だったんだろう。彼らの間ではよくある事なのかも知れないけれど。

公演の後にツイートしたように、ガッカリとは言わないまでも(コストパフォーマンスからしたらガッカリかもしれないが)、感動するものではなかった。ガッカリより何より、疑問が渦巻く公演だったと言える。レストランでの彼らの表情といい、ある意味忘れられない公演となったのは間違いない。

そういえば、リスネールが入口を入ったところで電話してた。ガルニエやバスティーユでジョエルを見かけることなんてないワー。でもガルニエやバスティーユは広くて目に入らないだけかも。

Direttore DANIEL BARENBOIM
Regia scene GUY CASSIERS
Scene e luci ENRICO BAGNOLI
Costumi TIM VAN STEENBERGEN
Video ARJEN KLERKX e KURT D'HAESELEER

Siegmund SIMON O'NEILL
Hunding MIKHAIL PETRENKO
Wotan RENÉ PAPE
Sieglinde WALTRAUD MEIER
Brünnhilde IRÈNE THEORIN
Fricka EKATERINA GUBANOVA

2013/06/16

Götterdämmerung / Le Crépuscule des Dieux / 神々の黄昏③

大迫力!!!(第2幕後のツイート)
第2幕の後で大迫力と言ったが、実際のところ第1幕でヴァルトラウトが登場するまでは
オケもソリストもお疲れモードというかピシッと感に欠け何やら長く感じられたのだった。
ブリュンヒルデに今日が初日のワトソン(ラングが小花を冠のようにしていたのとは変わって、
髪を後ろに束ねた部分にあしらっている)最初はセーブモードで様子見だったのか、
期待していたほどの歌唱ではない(「♡~」な第1幕と「💀」な第2~3幕との対比を明確にするためなのかも)。
それが第2幕に入ってからはエンジン全開。ワトソン1人のプレゼンスと歌唱でオーケストラ分の迫力がある。
裏切られたことへの憤怒の権化と化していて(可愛さ余って憎さ100倍というアレ)、
演技の一挙手一投足に強い怒りがこもっている。
と言うよりあれはもう演技には見えず、本当のブリュンヒルデ(そんなものは存在しないけれど)が舞台上にいるようだ。
ジークフリートの頭を押さえて揺さぶるところなど自分の頭が揺すられてるんじゃないかと錯覚しそうになるほど。
まるで稲妻のような尖った怒りの矢がビュンビュンとこちらに飛んでくるのが見えるかのよう。

ブリュンヒルデのその黒光りするような怒り、虎視眈々と指輪を狙うハーゲンの野望、
裏切られた上に家来達の面前で恥をかかされたグンターの屈折した思いが渦巻く復讐の三重唱がすばらしい。
今日のグンターは優柔普段で意志薄弱だった前回までの役作りと少し違い、
最初から最後までソリッドな印象を与える演技で通していたのでここのインパクトが増す。

そしてこの怒り狂った熱いパワーのまま自己犠牲に突き進むのかと思いきや、
真実を知ってヴァルキリーとしての叡智を取り戻したブリュンヒルデの冷静な視線と侵し難い威厳をそなえ、
かつあの華のある歌唱にただただ圧倒される。
ここでのブリュンヒルデは第1幕で妹相手にのろけていた彼女ではない。
それにしてもリンダ・ワトソンの迫力、パワーと揺るぎないテクニックには驚嘆するばかり。
今年58歳になるとは思えない力強さ。あの力はどこからきてどうやって養われているのだろう…。

そして今日感じたのは、やっぱりこれはひとつのハッピーエンドだなということ。
ストーリーとしてはラインの3人の乙女にしか幸せは訪れないが(幸せと言っても元に戻るだけなのだが)、
最後に続々と重なるメロディーにネガティフなものはないし、あれだけ愛の救済のテーマが繰り返されるのだから。
ここでオケに歌う力がないと散漫で白々しい終わり方に陥ってしまうところだが、
今日のジョルダン&オケは迫力を保ちつつも、ひとつひとつ懐かしい思い出を示しながら
幸せに導いていくような優しさを感じさせてくれた。

ジークフリートは少しパワー下がり気味の気がしたが、第3幕の"Hoiho!"のやりとりで声が一瞬(二瞬くらいかも)
裏返ってしまいドキッとさせられたが、持ちこたえてその後も歌い続けた。
でもやっぱり最後まで気になってしまい…。
次のジークフリートまでしっかり養生して復活して欲しいもの。

前回までとは演出と衣裳にいくつか変更があった。これからもまた発展していくのだろうか。
(すなわちこのプロダクションはまだお蔵入りにはしないということか…)
今日の神々の黄昏で、2月のラインの黄金から座ってきたプルミエバルコンの2列目の席ともお別れ。
舞台が観やすく音の響きと通りの良い理想的な席だった。
右隣の英国紳士は3人の違う人と来ていた。左隣はなんとずっと空席のまま。
いろいろ想像がひろがりますね。

勢いづいて次の日曜日のジークフリートを手配。プルミエバルコンに願ってもないいい席があったものだから。
火曜日のヴァルキューレに続いてだしね…、などと思うとじゃあ翌週水曜日の神々の黄昏はどうなの?ということになるが、これは体力的に問題がありそうなのでもっと近くなってから決めることにする。

2013/06/07

Götterdämmerung / Le Crépuscule des Dieux / 神々の黄昏②


やっぱりいいのはヴァルトラウテのコシュ。ここで彼女がピシッと締まった説得力のある歌唱を聴かせてくれるのが嬉しい(さもないと第2幕最後の三重唱まで、歌唱的にこれといったポイントがなくて長い)。またブリュンヒルデの言動を目の当たりにしての「こりゃダメだわ…」という絶望感を非常によく演じている。
芝居的には長いと言ってもやはり音楽が素晴らしくて、音の流れの中に揺蕩うような気分になるのがとても心地よい。それぞれのパートの楽器の音が水晶の柱のようにスッと立っているように聞こえ、かつアンサンブルとして美しく統一が取れている。またmfからppに下りていく時のの弦の美しさと言ったら…!
今日は席に恵まれなかったからなぁ…。プルミエバルコンの最前列で場所としてはとてもよかったのに、周囲に気が散る原因になる人が何人かいたのだった。きーっ!どうしてこう行儀の悪い人っているのかしらー!それでもやっぱり来週日曜日の最終公演(その後チクルスで1公演ずつあるけれど)が楽しみでワクワクしますね。
パーテールはスタンディングオヴェーション。珍しいことです。


月曜日は音楽とソリストに集中していて、「?」と思ってもそれほど気にならなかったセノグラフィと演出の奇妙さが今日は気になって仕方がなかった。その演出について次回から6回に分けてアップする予定。
1er BALCON 1-43

2013/06/03

Götterdämmerung / Le Crépuscule des Dieux / 神々の黄昏①



ジョルダン、第1幕が2年前に比べると速い!迷いがなくまっすぐに前を見据えているような明晰な指揮だ。
圧巻のジークフリートの葬送行進曲。ブリュットではなく洗練された力強さの骨格が、輝く壮麗な音色を光のようにまとっているとでも言うべきか…。今まで聴いてきた、どんな葬送行進曲からも得られなかった新しい感覚が呼び覚まされていることに気づく。宇宙のような空間に浮くように立っていると、ラインゴールドから延々と見続けてきたストーリーが巨大なスライドショーのように(前方から後方へむけて)シューン、シューンと流れていくというような印象。とてもヴィジュアル性のある演奏と感じた。

ここを要として前で呼応する第2幕最後の三重唱も黒々とした強い印象を残す。
他の場面では優柔不断で意志のないような曖昧な人物グンターが逡巡の末に復讐を決意したこの場面では別人のようになって決意を歌い上げる。それを歌唱面と演技面で的確に表現していたニキーチンの上手さに驚く。
後で呼応するブリュンヒルデの自己犠牲の場面はブリュンヒルデ役のペトラ・ラングが「後の決着はすべて私がつける」という意志をそのまま体現している。ジークフリートが生きていた頃の鈍な女性ではなく、ヴァルキリーだったころの理性と知性を完全に取り戻しているのがよく判る。

演出としてはハーゲンと特にアルベリヒの扱いが面白い。
というのもハーゲンは車椅子に座っていて、アルベリヒに操られている感を色濃く表しているのだ。
序幕での最初のシーンから現れることからも(ただしこの次点でそれがアルベリヒであることは示されない)それがはっきりしているし、ジークフリートの背を槍で刺す時ハーゲンと共にアルベリヒ自身も槍を手に持っている。そして何と言っても最後にラインの乙女から指輪を取り戻そうとして(一瞬指輪を手にするが)、彼女達に槍で刺されて死ぬのがアルベリヒなのである。

カーテンが下りる直前のシーン(舞台奥に倒れているブリュンヒルデとジークフリートはさておき)、欠けたラインゴールドとその前で槍に刺されて倒れているアルベリヒ、その姿がこのテトラロジー "Der Ring des Nibelungen" を閉じるのにふさわしい。

PHILIPPE JORDAN  Direction musicale
GÜNTER KRÄMER  Mise en scène
JÜRGEN BÄCKMANN  Décors
FALK BAUER  Costumes
DIEGO LEETZ  Lumières
OTTO PICHLER  Chorégraphe
STEFAN BISCHOFF  Création images vidéo
PATRICK MARIE AUBERT  Chef du chœur

ORCHESTRE ET CHŒUR DE L'OPÉRA NATIONAL DE PARIS

TORSTEN KERL  Siegfried
EVGENY NIKITIN  Gunther
PETER SIDHOM  Alberich
HANS-PETER KÖNIG  Hagen
PETRA LANG  Brünnhilde
EDITH HALLER  Gutrune, Dritte Norn
SOPHIE KOCH  Waltraute, Zweitte Norn
WIEBKE LEHMKUHL  Erste Norn, Flosshilde
CAROLINE STEIN  Woglinde
LUISE CALLINAN  Wellgunde



終演のカーテンが下りたのが23時35分(ディストリビューションに記載の終了予定時間は23時50分)。普段のオペラの終了時間よりずっと遅いので、ここで席を立って帰る人が多い。カーテンコールが終わったのが40分ちょっと過ぎくらい。

2ème BALCON 2-27(上のバルコンにデビュー。覚悟してはいたものの急傾斜に目が回りそうだった。2列目だったので上階のドアから下りて行かねばならず、手すりをしっかり掴んで下りた。)

2013/06/02

Giulio Cesare / ジュリオ・チェーザレ③ @Palais Garnier


「マダムピオは体調不良のため今日の公演をキャンセルでせざるをえなくなりました。代役にマダムチョイが入ります。」うわー、残念無念...!
しかし一旦彼女のパフォーマンスを観たら残念どころではなかった。彼女はしっかりした実力派のソプラノである。第2幕の最後のアリアなど、溢れる情感がホールの隅々にまで満ちている。
チェーザレと我が身に降る不運を切々と歌い(オーバーにならない分、リアリティが増す)、悲しみと絶望感に打ちひしがれた様子があまりにも真に迫って演技には見えず。
本来このアリアの後に第9場があるが、この演出では第9場が第3幕の最初におかれているので第2幕はこのアリアで幕がおりて場内のライトがつく。クリネックスもハンカチも足元のバッグの中で(またか!)1階ロジュの最前列で泣き顔をさらすまいと少し焦った。

前後するが第2幕最初の方、額の中で歌う"V'adoro, pupille,"の声の良さに惚れ惚れ。
珠のような声とはまさにこういう声だろう。つやがあって清らかだがチェーザレを落とそうという策略をかすかに秘めている感じがする。早いパッサージュのところで音が滑ったり低音があまり響かなかったり、ブレスのタイミングが悪いのか息切れかと思わせるところが少々あった…が、が、が、そんなことを掃き飛ばすような素晴らしいパフォーマンスでした。ピオには気の毒だが今日はチョイを聴けて幸運だった!

ザッゾは前回の方がよかった。前回を94点とすると今日は76点くらいかな(あくまでもイメージ)。全体的に声を少しセーブして慎重にコントロールしながら歌っている感じ。それでも私は彼の声が聴ければそれで満足。

今日の「目が点」はデュモー。何か特別ハッピーなことがあったのか、最初から最後まであの弾けようは何だったんだろう?コーネリアに迫る時、普段は履いたままのあの巻きスカートみたいなのまで脱いでパンツ1枚(+首飾り)になるとは…!彼の場合、これだけはしゃいでも歌唱が疎かにならないところがいいですナ。来々シーズンのヴェニスに死すに出演のプロノスティックが出ているが、ぜひ他の役でも観たいもの。

水曜日にトルステン・ケールのリサイタルに来るけれど、ガルニエでの今シーズンのオペラは今日でお終い。ラ・シルフィードを観に来るかどうかは今のところ未定。

1er Loges de face 36 1-2