2013/06/03

Götterdämmerung / Le Crépuscule des Dieux / 神々の黄昏①



ジョルダン、第1幕が2年前に比べると速い!迷いがなくまっすぐに前を見据えているような明晰な指揮だ。
圧巻のジークフリートの葬送行進曲。ブリュットではなく洗練された力強さの骨格が、輝く壮麗な音色を光のようにまとっているとでも言うべきか…。今まで聴いてきた、どんな葬送行進曲からも得られなかった新しい感覚が呼び覚まされていることに気づく。宇宙のような空間に浮くように立っていると、ラインゴールドから延々と見続けてきたストーリーが巨大なスライドショーのように(前方から後方へむけて)シューン、シューンと流れていくというような印象。とてもヴィジュアル性のある演奏と感じた。

ここを要として前で呼応する第2幕最後の三重唱も黒々とした強い印象を残す。
他の場面では優柔不断で意志のないような曖昧な人物グンターが逡巡の末に復讐を決意したこの場面では別人のようになって決意を歌い上げる。それを歌唱面と演技面で的確に表現していたニキーチンの上手さに驚く。
後で呼応するブリュンヒルデの自己犠牲の場面はブリュンヒルデ役のペトラ・ラングが「後の決着はすべて私がつける」という意志をそのまま体現している。ジークフリートが生きていた頃の鈍な女性ではなく、ヴァルキリーだったころの理性と知性を完全に取り戻しているのがよく判る。

演出としてはハーゲンと特にアルベリヒの扱いが面白い。
というのもハーゲンは車椅子に座っていて、アルベリヒに操られている感を色濃く表しているのだ。
序幕での最初のシーンから現れることからも(ただしこの次点でそれがアルベリヒであることは示されない)それがはっきりしているし、ジークフリートの背を槍で刺す時ハーゲンと共にアルベリヒ自身も槍を手に持っている。そして何と言っても最後にラインの乙女から指輪を取り戻そうとして(一瞬指輪を手にするが)、彼女達に槍で刺されて死ぬのがアルベリヒなのである。

カーテンが下りる直前のシーン(舞台奥に倒れているブリュンヒルデとジークフリートはさておき)、欠けたラインゴールドとその前で槍に刺されて倒れているアルベリヒ、その姿がこのテトラロジー "Der Ring des Nibelungen" を閉じるのにふさわしい。

PHILIPPE JORDAN  Direction musicale
GÜNTER KRÄMER  Mise en scène
JÜRGEN BÄCKMANN  Décors
FALK BAUER  Costumes
DIEGO LEETZ  Lumières
OTTO PICHLER  Chorégraphe
STEFAN BISCHOFF  Création images vidéo
PATRICK MARIE AUBERT  Chef du chœur

ORCHESTRE ET CHŒUR DE L'OPÉRA NATIONAL DE PARIS

TORSTEN KERL  Siegfried
EVGENY NIKITIN  Gunther
PETER SIDHOM  Alberich
HANS-PETER KÖNIG  Hagen
PETRA LANG  Brünnhilde
EDITH HALLER  Gutrune, Dritte Norn
SOPHIE KOCH  Waltraute, Zweitte Norn
WIEBKE LEHMKUHL  Erste Norn, Flosshilde
CAROLINE STEIN  Woglinde
LUISE CALLINAN  Wellgunde



終演のカーテンが下りたのが23時35分(ディストリビューションに記載の終了予定時間は23時50分)。普段のオペラの終了時間よりずっと遅いので、ここで席を立って帰る人が多い。カーテンコールが終わったのが40分ちょっと過ぎくらい。

2ème BALCON 2-27(上のバルコンにデビュー。覚悟してはいたものの急傾斜に目が回りそうだった。2列目だったので上階のドアから下りて行かねばならず、手すりをしっかり掴んで下りた。)