2012/12/29

Carmen ④(2012年12月29日 @Opéra Bastille)


新しいプロダクションが熟成するには時間がかかるのだと実感。材料が少ないアイスクリームのアパレイユだって24時間以上寝かせてから回した方が風味がなじんで美味しくなるのだから、膨大なエレメントで成り立っているオペラの場合それは当然かもしれない(⬅あくまでもイメージでアイスクリームとオペラの関連性はゼロです)。
やっぱり観客は大きな声の歌い手と響きのきれいな歌い手が好き。今回のプロダクションで言えばテジエとキューマイヤーが大きな拍手を受けるし、彼らは充分その拍手を受けるに足るパフォーマンスを披露している。一方シューコフはこれほどいい役者で、感情を表す声のドライブ感もすごくツボを押さえているのに、重量級のテノールではないためかそれほど拍手がこないのがなんとも残念。私は芝居好きなので、いくら声の良いソリストでも役者としての巧さが感じられないとそれほど心が動かないのである。


ソリストが同じ所に立ちっぱなしあるいは座りっぱなしで動かずに歌うシーンが多くて、彼らの動きだけを見たら退屈な演出ではあるが、あれほど悪評が高い理由がわからない。イコノクラストが過ぎるのか、アントナッチの声のボリュームのなさとRGから最初の何公演かでシューコフの調子が悪かったのも一因か。第一幕の途中でブツブツと文句ばかり言っていたヒトが周りの観客に「気に入らないなら出て行け」と追い出されていた。プロダクションを気に入らないのは彼の自由だが、他人に迷惑をかける権利はない。口を閉じて心中静かに嫌悪の炎を燃やせないならなら出て行くべきだ。
今日は最終日だからか、みんな自分の持っているものを全部出して感情のあふれるままに歌っている様子。特にコーラスは今までに増して迫力があり圧倒された。
あとはやっぱりジョルダンの指揮とオーケストラ。リズムとテンポのコントロール、クリアな色彩感とその陰影の豊かさ、ソリストやコーラスとのマッチングといい、これほどのカルメンを聴いたことがなかった。ジョルダン曰く「ビゼーはフランスのモーツァルトだと思っている。カルメンの第4幕の最後の方はヴァグナー風だし、オッフェンバック的なところも所々にある。」異なった多くのエレメントをまとめてここまで昇華できるなんて、感嘆するしかない。


☆デエはONP(オペラ部)のパケットと言えよう。26日にピッゾラートが体調不良でチェネレントラを歌っている(歌のみ、舞台上の演技はピッゾラート)。そんなコトが可能なんだ…。だって25日カルメン、26日チェネレントラ、27日にまたカルメンを歌ったことになる。

☆今日は颯爽としたジョルダンの指揮があまり見えない位置だったのでちょっと残念。でもジョルダンのジレが「クリスマスプレゼントの包装紙が余ったのでジレにしてみましたー」風でちょっと幻滅だった。スイス人だから仕方ないか…(すごい偏見)。

PARTERRE 8 25-27