2013/08/06

神々の黄昏の演出 4/6(第2幕)

ジークフリートが一足先に戻って来たシーン

第1幕のギービヒ家のシーンでブラインドが下りていたところに黒いカーテンがひかれていて、その前に花輪とカラフルなリボンのついたメイポールのようなものが6本等間隔で立っている。下手に車椅子に座って眠っているハーゲン、上手にアルベリヒが地面に座って二分された槍を合わせてテープで巻きながら修復している。
この槍でハーゲンの首を絞めるかのような動作で「自分(アルベリヒ)に誓え」と迫り、この槍を息子の手に残して去る。
アルベリヒが今もヴォータンへの憎しみを抱き指輪奪還の野望に燃え、身の自由が利かないハーゲンを文字通り操ろうとする意志がはっきりと表される演出だと思う。
このアルベリヒが常にシナリオの底流に厳然と存在し、ハーゲンは願望達成のための道具に過ぎないという2人の関係の描き方は独特で面白い。
しかしアルベリヒの存在を強調して前面に押し出すためにハーゲンを車椅子に座らせたことで、演出上の制限は厳しいものになっている。



ジークフリートが戻り、婚礼の準備をするというグートルーネを手伝うと言って2人が去る。ハーゲンが家臣を呼ぶと黒いカーテンが上がり、ブラインドの向こう側に例の大階段。その階段上に赤い制服を着た家臣達(男声コーラス)が。途中で小旗を広げて振るが、その小旗に描かれているのはブドウの房。謎だ…。
ブラインドが上がり、下手から幟を持ったり、カゴに入った花びらを撒きながら入ってくる女性の家臣(女声コーラス)に先導されてシルクハットを被り得意満面のグンターが選挙に勝った市会議員のような様子で両手を挙げたり、シルクハットに手をやって軽く会釈したりしながら現れる。
と間もなく先ほどオクトーバーフェストの会場設営をしていたワンピース姿の男子達が風の如くやってきてテーブルと椅子を置き、ブリュンヒルデを連れてきて椅子に座らせた後、また風の如く去っていく。
このシーンもすぐ後ろに大階段があって舞台前面しか使えないので、動きはは左右のみに制限されてしまう。これがギービヒ家の仕様、ということかも知れない。
ここに連れて来られた時のブリュンヒルデの衣裳は濃い紫の長いコート。怒りが燃え上がってそれを脱ぎ捨てると黒のシンプルなドレス。ウェディングドレスから喪服へ急転といったところか。


これはRGの写真
旗色の悪くなったジークフリートが空元気いっぱいで退場する時に、それまで着ていたヨレヨレのコートを椅子の背に置き忘れていく。
ブリュンヒルデが彼の弱点である背中を示すのに、そのコートの背中に大きな黒い十文字を縫いつける。言葉で教えるだけでは足りず「ここを狙え」とダメ押しするかの如くである。それだけ憎しみが深いとも言えようか。

ハーゲン、ブリュンヒルデ、グンターと並んだ三重唱の後、ブリュンヒルデはメイポールを2本引き抜いて倒し(鉄の棒が倒れる大音響!)、テーブルの上のものを払い落とし、椅子を引き倒し、まるで嵐のような勢いで退場。(婚礼の場面の演出はない。)