ピストルを撃ってミニー登場 ©Charles Duprat/ONP |
これは「”アメリカの”西部の娘」ではなくて「”ヨーロッパから見て”西の方にある国の娘」。この演出、荒唐無稽で面白過ぎる!第1幕はNYの摩天楼が見える(それも打ち破られたような壁の大穴から!)バーが舞台。ピカピカ光るスロットマシンや安っぽい不揃いの椅子などが雰囲気をはっきりと出している。そこに集まる男達は黒革のコートやブルゾンに黒革のパンツ、黒革のブーツ、黒いテンガロンハット。この人たちが大勢なので、彼らが移動する時に足音がとてもうるさい。ラ・ジョコンダの時もそうだったけれど、演出家や指揮者はこういう騒音が気にならないのかしら?ジェイク・ウォレスは白装束で、袖にのれんのようなピラピラのついたカントリーシンガースタイル。彼が歌う時は摩天楼の映像が緑の牧草地の映像に変わる。ミニーは赤革のロングコートに黒のテンガロンハットで文字通り紅一点。ピストルの轟音とともに登場。
©Victor Tonelli |
第2幕の舞台は一転して雪化粧の山の中。周りを針葉樹に囲まれた舞台中央にドカーンと置かれた銀色のキャラバン(キャンピングトレーラー)。その両側には巨大なバンビが狛犬のように踞って客席を見ている(目が光ったりするのよ!)。すぐ横のポールには国旗が。キャラバン内部は壁からベッドにいたるまで濃いピンク色のレザー張りで金色ボタンでキャピトン加工されていて、まるでバービーハウスのよう(幕が上がると客席から笑いが)。ベッドの上にはぬいぐるみが置かれていてミニーのナイーブな少女趣味を強調。内外の雰囲気の両極端さが面白い。
両脇の車の山が見えづらくて残念! ©Charles Dupurat/ONP |
第3幕の幕が上がるとそこには廃車になったポンコツ車が山のように積み上げられている(あれを積み上げて固定するの大変だろうなーと思った)。それを目にした観客からONPのオペラの舞台では稀な事に拍手が。もちろんあちこちから「シーーーーッッッ!!!」という声が上がって拍手はすぐに止んだ(笑)。そしてそのポンコツ車の山が左右にガーッと開くとライト輝くレビューの白階段があり、ミニーはその上から真っ赤なスパンコールキラキラのドレス姿で現れる(こういう格好の古いアニメのキャラクターがいたと思うんだけど思い出せない)。同時にバックスクリーンにはMGMのライオンのロゴにそっくりな映像が映し出される。そして首吊りを免れたジョンソンの姿が見えなくなったと思うと、彼は階段の上から白いタキシード姿で登場(笑)。映像でドル札がバラバラと降ってくる(爆)。最後、幕がおりる直前に手前のスクリーンに大写しになるのが20ドル札なんだけど「何だかんだ言っても、ま、20ドル程度のモノよ」ってことかしら…(笑)。
まぁちょっと歌詞と合わないようなところもそこここにあるのでピュリストの方々はご立腹でしょうが、私は気にせず大いに楽しんだので、このレーンホフの西部の娘のようなプロダクションをもっと増やせばいいのにな、と思う。
先に始まった西部の娘と一部重なるように蝶々夫人がプログラムされているが、同じプッチーニでも全く違った世界が観られて本当に面白い。音楽的には西部の娘の方が一貫性があるが驚きがない感じ。蝶々夫人の方は「あれ?これ火の鳥?」と思うような部分があったりして複雑なモザイク感がある。
それにしても年明けからウェルテル、西部の娘、オネーギンってONPでは銃声が響き渡ってますね(それが狙い?)。
それにしても年明けからウェルテル、西部の娘、オネーギンってONPでは銃声が響き渡ってますね(それが狙い?)。
今日はベルティが思いのほか好演。ちょっと痩せて(それでもお腹が丸いけど)何より始終大声でがなりたてないところがいい。そして演技巧いなぁ…とは言い難いが、トスカの時に辟易させられた「大根役者の熱演」ではなくなっている。でも彼が演じるとどんなキャラクターも芝居としてあまり深みのないサラーッとした人物になりがちなのは残念なところ。(「好演」と始めながら、結局「残念」になってしまったではないか!)
CARLO RIZZI Direction musicale
NIKOLAUS LEHNHOFF Mise en scène
RAIMUND BAUER Décors
ANDREA SCHMIDT-FUTTERER Costumes
DUANE SCHULER Lumières
DENNI SAYERS Mouvements chorégraphiques
JONAS GERBERDING Vidéo
NINA STEMME Minnie
CLAUDIO SGURA Jack Rance
MARCO BERTI Dick Johnson
ROMAN SADNIK Nick
ANDREA MASTRONI Ashby
ANDRÉ HEYBOER Sonora
PARTERRE 7 27-29