2013/11/02

AIDA / アイーダ ⑶ @ Opéra Bastille

Bキャストを観て少なからず不満が残り(AB各1公演しか席を手配していなかったので)「これで終了するわけにはいかないワ」と息まいたものの私が行ける日はすべてソールドアウト。なかなか戻りチケットもなかったが何とか手に入った今日のAキャストの公演。

前回のスミスの代役氏とボチャロヴァの記憶を払拭してもらいたかった2人、アルヴァレスとディンティーノ。
まずアルヴァレスは続けてキャンセルしたスミスの代役で歌ったというので(なんて贅沢な代役)相当調子がいいのかと思ったが、それほどでもなく…。Celeste Aidaなどはジョルダンがカゴの中の卵のように大事に支えていたように見え、軽い風邪でもひいているのかしらと思ったくらいには元気がない印象を受けた。開演前に例の「◯◯氏は不調ですが…」があっても不思議ではなかった。
それでも彼独特の帆に風をうけて大海原に出帆していくようなメロディアスな歌唱、これは聴いていて爽快感があるし、丁寧に歌っているので(元気がよすぎてうっかり秘密をもらしてしまって”アチャー!”というラダメスではなく)誠実でおちついたラダメスを観ることができた。

ディンティーノはおそらく絶頂期を過ぎていると思わざるを得ない声だけれど、そのフレージングとディクション、オケが紡ぎだす音楽への歌唱ののせ方は他のソリストから抜きん出ていると感じる。そしてなんと言っても舞台上の彼女は叶う望みのない恋に翻弄されて苦しむ王女アムネリスそのものなのだ。
ラダメスの裁判のシーン(舞台裏でのラムフィスとコーラスの歌唱、これがまた見えない所からゴゴゴーとせり出してくるかの如くで素晴らしい!)では無力感と焦燥感に打ち拉がれる様子が真に迫っている。役者だワー…。
最後の "Pace t'implore, ... pace, pace ... pace!" は彼女のすぐ下で高らかに歌っているアイーダとラダメスの存在を霞ませるほどの深みのある祈りのこもった声(決して大声ではない)とプレゼンス。今思い出しても背中がゾクゾクするようなこの部分だけでも観て聴く価値があるというものです!と言うより、実はココを観て聴きたかったと言っても過言ではないかもしれない。