□3月5日(火曜日)□
金曜日より良いパフォーマンスであることを祈って出かけよう!
今日のシラグーザはかなり好調だった様子(1か所階段を踏み外したようなところがあったが)。al coreのreのところを上にいっていたし。金曜日に比べるとみんなリラックスして歌っていた印象で、格段によかった(saufティスベ)。アリドーロは佇まいや身のこなしに相変わらず落ち着きがなくて、彼も従者のように見えてしまうのがちょっと難だろう。
アンジェリーナも別人が歌っているのかと思うくらい、みずみずしくツヤのある声で音も外さず美しい歌唱を披露してくれた。でも最後の音は苦手意識があるのだろう、金曜日と同じになってしまい残念。ここまで素晴らしいパフォーマンスを続けたのに最後の最後で興醒めとなるのは観客にはもちろん、マルフィ本人にとってもハートブレイキングなことだ。ディドナートもガナッシもここでこんな声出さない…。
それにしてもこのシリーズはやっぱりカンパネッラの指揮で聴きたかったとつくづく思う…。
アンフィ前方中央の席、コスパは最高だがうるさい客が多くて閉口する。今日も携帯が何回も鳴るし、あちこちでヒソヒソ喋ってるし、足でカツカツとリズムとってる人がいるし(アンフィの床は木なので)、ウィンドウブレイカーみたいな上着をひっきりなしにカサカサしてる人、ラミロとアンジェリーナのデュエット中ずーっと咳してる人…。
□3月8日(金曜日)□
オーケストラ(&指揮者、多分)が前の2回に比べてずっと軽快になっている。でも何となくロッシーニに聞こえないという不思議。先シーズンのマルコのセビリアの理髪師は正にロッシーニという感じだったのに。
隣に座ったマダムはペルーの人で、私が「フロレスの声はPatrimoine culturel immatériel de l'humanitéにするべきですね!」と言ったら大変誇らしげで満足そうに何度も頷いていた。私が持っていたオペラグラスを見て「そのオペラグラスはずいぶん小さいですけど、舞台はどう見えますか?」と尋ねられたので「第2幕の間お使いください」とすすめた。私はこれから後も観に来るし、実際このオペラグラスはとてもいいので間に置きますからとお好きな時にどうぞと使ってもらった。
おじいちゃま、あるいはおばあちゃまが孫を連れてきているのが目立ってバカンスだなーと実感。行儀のよい子もいれば、興味もないのに無理に連れて来られて飽きたのか、ムムム…な子もいる(祖父母の態度も然り)。
□11日(月曜日)□
回を重ねるごとにダンディーニが面白くて彼から目が離せない!ノヴァロのよさはまさにキワモノ的偽プリンスとしての立ち姿と身のこなしをベースにした芝居の上手さ。ちょっとした首の傾げ方やクルリと振り向くときの指先にも偽プリンス感が漂っているので可笑しくて可笑しくて(笑)。すらりと細身で衣裳がよく合い、エクストラヴァガントなカツラとメイクもピッタリ!衣裳&カツラが破壊的に似合わないシラグーザと対称的だが、歌うとなるとこれはもうシラグーザに敵わないのは仕方がない。
今日はオーケストラの音が今までとは違って聞こえて不思議だった(席に違いはない)。今までよりもまとまった統一感がある音色に感じた。あまりロッシーニっぽく聞こえないという点では同じだったけれど…。やっぱりこれは指揮者の趣味ってコトなのだろう。去年のマルコの理髪師みたいにテンポが軽快でシャキシャキッとしたロッシーニが聴きたかったとまた思ってしまった。
今日の隣人はモスクワからの女性。彼女もオペラグラスに興味を持ったようだったので、時々貸してさしあげた。アントラクトにお喋りしていると、ここはヴェスティエールにコートを預ける観客が少ないと言って驚いていた。「邪魔じゃないですか?ボリショイ劇場では持って入れませんよ」だそうだ。そして「パリは物価が高いですね」とも。モスクワはずっと物価が安いらしい。でも以前に比べて随分上がったんじゃないですか?と尋ねると、深く深ーく頷いていた。ボリショイ劇場のチケット入手は難しいことではないけれど、バレエはオペラよりずーっと高いからそれが難しい問題なんですよ、と笑いながら語っていた。
□16日(土曜日)□
今日だけ違う指揮者だったが、オーケストラが意外なほどよかった。ソリストもコーラスも指揮者への慣れがないのでいつもより合わせる意識をしていたのだろうか。歌とオーケストラの方向性が合うと、聴いていてこんなにも気持ちがよいモノなんだと改めて実感。今日1回だけなんて残念すぎるので、残りの公演も全部彼が振って欲しい!これは月曜日も感じたけれど、オーケストラの音が違う。滑らかで音にほどよい厚みがあり、バランスの取れたとてもいい演奏と思った。
□19日(火曜日)□
今日の指揮はまたフリッツァなんだろうなぁ(ええ、残念ながら彼でした)。
アリドーロがお疲れ気味な感じだった。
セレナ・マルフィは今日も最後の高音を失敗したが、彼女はこれからが楽しみな歌い手だ。今はおそらく感情と技術のコントロールがしきれずに鋸の歯のようなパフォーマンスになってしまうのだと思う。これから経験を重ねるうちに自信もついて最後の音もちゃんと出せるようになる、きっと!
アリドーロがお疲れ気味な感じだった。
セレナ・マルフィは今日も最後の高音を失敗したが、彼女はこれからが楽しみな歌い手だ。今はおそらく感情と技術のコントロールがしきれずに鋸の歯のようなパフォーマンスになってしまうのだと思う。これから経験を重ねるうちに自信もついて最後の音もちゃんと出せるようになる、きっと!
□25日(月曜日)□
今夜はチェネレントラの最終日。思うところあって今月だけで7回も観てしまったので、食べ過ぎでお腹いっぱいの時と同じような感覚。もうチェネレントラは当分いいや…、というのが正直なところ。しかしあのダンディーニがもう見られないと思うとちょっと残念でもある(笑)。
今回のシリーズで初めて身体中を小さな粒子がパーッとかけめぐるような感覚のラミロの歌唱があって「あぁこういう感覚が味わえるのはオペラならでは!」と大変に満足。
でも、また指揮とオーケストラと歌唱(コーラス&ソリスト)のテンポが合わないところが何か所かあった上、オケの音もシリーズ最初の方の音に戻ってしまったようで今ひとついただけない感じであった。最終日で合わないというのはちょっと(いや、かなり)問題ではないだろうか。
ドン・マニフィコは今夜で解放されるのが嬉しいのか(笑)何時にも増してはしゃいでいるように見えて可笑しかった。自分の好きなように演じている感じ、と言うよりこの人はこれが演技というよりも普段からこういう人なんじゃないかしら?というのが垣間見えたようにも思えて微笑ましく見えた。ここでこれが微笑ましく見えるソリストと、興醒めになるソリストの差はどこから来るのだろうか…?
アリドーロの歌は結局最終日までイタリア語に聞こえず。もっとイタリア語のディクションをしっかりお勉強しましょう!
1ヶ月間テーブルの上に置いてあったチェネレントラのプログラムを書架にしまう。表紙の裏に挟んであるチケットとディストリビューションの厚みに「…」。もうこんな100本ノックのような無茶なまねはしませんよ!(多分…)
*チェネレントラは1ヶ月に10回の公演があったうち7回も観に行ったうえ、他のオペラやバレエ、コンサートにも行ったのでちょっと疲れてしまった(なんと贅沢な疲労なことか…)。