2013/05/23

Giulio Cesare /ジュリオ・チェーザレ① @Palais Garnier



ピオのクレオパトラが秀逸のパフォーマンス。
艶のある高音にまったく力みがなく、その高音部に移る際に「よっこらしょ」と階段を一段上るようなギアチェンジのない滑らかさが聴いていて心地よい。
ドゥセのクレオパトラを念頭に作られた演出をドゥセを真似て過剰に演じることをしなかったのは賢明な選択だったと思う。演技にとらわれないエモーショナルな歌唱が強く印象に残っている。
チェーザレ役にはザッゾの声以外考えられない私。彼が歌い出した瞬間、あぁやっぱりこの声でないと…、と再認識。出だしこそ「ん?ちょっと抑えめのスタート?歯切れよくない?」と訝ったものの、それは最初のうちだけ。 "Va tacito e nascosto" を聴いて完全に至福感に満たされる。
彼の声は他の歌い手の声とはまったく違う心の部分に触れてきて、その感覚を言葉や文章にする術を今のところワタシは持ち合わせていない。
それからやっぱりデュモー。彼が一心同体としか思えないトロメオの役でここにいるかいないかは、このプロダクションの鍵である。
この役をさまざまな演出で歌っているにも関わらず、妙に慣れたおざなりなパフォーマンスをしないところが更によい。
そしてやっぱりあの声、バロック界の宝のひとつである。
クリアで密度が高くソリッドなのに表面にうっすらと柔らかさを感じさせるところが色気を感じさせる彼の声の秘密かもしれない。でもこの役ばかりで飽きてしまっていないかちょっと心配でもあり…。
このシリーズのウィークポイント(それもかなり大きな)、セスト役のデエ。
クリアな声とすこしくぐもった声が1フレーズの中で混ざってとても聞きづらい。
バロックに挑戦するのは初めてかしら?それとも不得意科目かしら?音が上下するところもガタガタだし、低音は出ないし…。他のソリストがバロックを得意としている分、彼女の弱さと不安定さが余計目立った。
やはりバロックオペラ好きだなー、と改めて感じたジュリオ・チェーザレのプルミエールだった。


EMMANUELLE HAÏM  Direction musicale
LAURENT  PELLY  Mise en scène et costumes
ALEJANDRO STADLER  Réalisation de la mise en scène
CHANTAL TOMAS  Décors
AGATHE MÉLINAND  Dramaturgie et collaboration à la mise en scène
JOËL ADAM  Lumières
BÉATRICE MALLERET  Chef de Chœur

ORCHESTRE ET CHŒUR DU CONCERT D'ASTRÉE

LAWRENCE ZAZZO  Giulio Cesare
VARDUHI ABRAHAMYAN  Cornelia
KARINE DESHAYES  Sesto
SANDRINE PIAU  Cleopatra
CHRISTOPHE DUMAUX  Tolomeo
PAUL GAY  Achilla
DOMINIQUE VISSE  Nireno
JEAN-GABRIEL SAINT-MARTIN Curio



81S