Te Deum の素晴らしかったこと!
カウフマンがカヴァラドッシ役ののDVDで予習をしていたので、マルコ・ベルティがトドみたいで幕開けからヴィジュアル的にまず幻滅。絵を描くために組んである足場を踏み抜くのではないかという危惧さえ抱かせます。
そればかりでなく、第1幕第2幕とフロレスの3倍はあろうかと思われる大声でブルドーザーの如くゴリゴリとニュアンスのない一本調子で歌い続けるので大分辟易しました。バスティーユのあのホールにわんわん響くような大声ですよ。独唱リサイタルあるいは同じく大音響のソリストとコンサート形式で出るのがいいんじゃないでしょうかね。そして彼は演技者としては大根役者と言ってさしつかえないレベル。それがパワフルな歌唱に合った熱演なので「大根役者の熱演」という、観客としては「参っちゃうなぁ…」と困惑してしまうような結果になったのが残念です。
でも残念なことばかりではもちろんなく、いいところがあって。それはベルティはイタリア人なので、当然ながらイタリア語の歌い回しがいいこと(これとても大事!)。あと第3幕目のアリアはバッテリー切れだったかして(自分でコントロールしたのかも知れません)ぐっとトーンダウンしたため、その分声に陰影が出ると共に歌唱に深みが増して、共感できるカヴァラドッシに変身していました。
トスカ役のセラフィンはよく通る美しい声で、舞台上のプレゼンスもタイトルロールとしてしっかりしています。でも歌唱も演技もあまり強い印象を残すものではないのは彼女自身のキャラクター不足ということでしょうか。来年のヴァルキリーでジークリンデにキャスティングされていますが、このトスカがどんなジークリンデになるのか楽しみでもあります。
ミュルザエフのスカルピアはいかにもサディックな悪代官(あるいは悪徳廻船問屋)の顔になっていますが、どういうわけか歌い方と演技から善人さがにじみ出ていて少し残念な感じ…。声はロシア系独特のベルベット風というかスモーキーな美しい声で、スカルピアの冷酷で邪悪な役どころに合うかといわれるとちょっと「?」という気がします。彼は来年ラ・ジョコンダでこれも極悪人のバルナバにキャスティングされています。
不思議に感じたのがセノグラフィと衣裳がちぐはぐだったこと。舞台装置は巨大ながらもシンプルで光の使い方も美しいのに、衣裳が古くさくて貸衣装のように見受けられました。舞台装置と衣裳は同じ人が担当しているのに全然馴染んでいないというところに何か狙いがあったのでしょうか。
しかし、しかし、何をおいてもさまざまな「?」や「…」をことごとく翻してくれたこのプッチーニの音楽、それをここまで美しく聴かせてくれたオーケストラとコーラスに心から感謝。いえ本当にONPのオーケストラにここまで感動したのは初めてです。
Paolo Carignani
|
Direction musicale
|
Werner Schroeter
|
Mise en scène
|
Alberte Barsacq
|
Décors et costumes
|
André Diot
|
Lumières
|
Patrick Marie Aubert
|
Chef du Choeur
|
Martina Serafin : Floria Tosca
Marco Berti : Mario Cavaradossi
Sergey Murzaev : Scarpia
Nicolas Testé : Cesare Angelotti
luciano Di Pasquale : Il Sagrestano
Simeon Esper : Spoletta
Michal Partyka : Sciarrone
Christian Tréguier : Un Carceriere
Marco Berti : Mario Cavaradossi
Sergey Murzaev : Scarpia
Nicolas Testé : Cesare Angelotti
luciano Di Pasquale : Il Sagrestano
Simeon Esper : Spoletta
Michal Partyka : Sciarrone
Christian Tréguier : Un Carceriere
Orchestre et choeur de l'Opéra national de Paris
Maîtrise des Hauts-de-Seine / Choeur d’Enfants de l’Opéra national de Paris
Maîtrise des Hauts-de-Seine / Choeur d’Enfants de l’Opéra national de Paris