第1部(上)と第2部(下)の緞帳。クローディア・シーファーや
スカーレット・ヨハンソンのなど顔をコラージュしたものとのこと…
スカーレット・ヨハンソンのなど顔をコラージュしたものとのこと…
Hippolyte et Aricieを観た直後「あ、ステファンが歌う!」と、中央のよい席があったので演出家もセノグラファーも確かめずに即予約してしまったオペラです。予習を始めたところでこのセノグラファーのアーティストとしての作品を見て呆然としました。いやー、参りました。彼を知っていたらおそらくこの公演は見送ったことと思います。「なに、これを観に行くの?どうして?」などと言われ「それは私も訊きたい」と憮然としたものです。
ひとことで言って、Médée役のミシェル・ロジエの独壇場でした。嫉妬と復習の炎をメラメラ燃やす王女そのものを好演。赤いエナメルのラップコート風の衣裳が安っぽく見え、気の毒でしたが。歌唱に芯があり、役柄にうまく入り込めたのか自信が感じられ、もちろんまだコノリーほどのプレゼンスと貫禄はないけれどこの先がとても楽しみなメッツォです。
それにひきかえ彼女の夫ジャゾン役のAnders Dahlinの歌唱は「何、これ!」と思わず言いたくなるような出来。声のトーンを保てず、よく聞き取れないような薄紙のような声でスカスカと歌ったかとおもうと急に大声を張り上げたり、完全に音をはずしたり…、今日は調子が悪かったのだろうと彼の名誉のためにも思いたいところ。
ジャゾンがそんな調子なので、オロント役のステファンの歌唱が際立って美しく聞こえました。テゼー役の時にも感じましたが、口跡がよくて艶と質感のある声に品格の高さが加わってまさにバロックオペラのためのような声です。(テゼーの時と違って馬子にも衣装的効果がなくて視覚的には残念ではありましたが…)
クレオン役はLナウリ。奥様のドゥセと同じく演技派でなかなか魅せてくれます。ただ最初は歌唱も好調だったのに、第2部が進むに連れてだんだん声の密度が薄れていってしまったのがちょっと残念でした。
それにしても、意味不明なセノグラフィと意味不明な演出、全身黒タイツに身をつつみ、ユニクロのダウンベストを羽織った人々が組み体操みたいなことをする意味不明なダンス…私には視覚的に全く理解不能な舞台でした。
残念なことに音楽が印象に残っていません。多分初めて観るオペラだったので音楽的な面よりも芝居の方に意識が行っていたのだと思います。それにホールのせいか席のせいか、H&Aと同じオーケストラ(ル・コンセール・ダストレ)が乾燥した厚みのない音に聞こえました。が、これは指揮者の意図するところかもしれません。
Emmanuelle Haïm : direction
Pierre Audi : mise en scène
Jonathan Meese : scénographie
Marlies Forenbacher : scénographe associé
Jorge Jara : costumes
Willem Bruls : dramaturgie
Jean Kalman : lumières
Kim Brandstrup : chorégraphie
Michèle Losier : Médée, La Gloire
Anders Dahlin : Jason
Stéphane Degout : Oronte, un chef des habitants, un berger
Sophie Karthäuser : Créuse, La Victoire, 2e bergère
Laurent Naouri : Créon
Le Concert d’Astrée
Chœur d’Astrée
*セノグラファーのJ. Meeseはドイツ人の人気コンテンポラリーアーティストだそうです。2016年のバイロイトでパルシファルを担当するという噂を聞きましたが、本当だったらどんな舞台になるのか恐いもの見たさで気になるところ。