2013/12/01

Elektra / エレクトラ ⑵ @ Opéra Bastille

1ヶ月前の公演と比べてどんな風に変わったか(あるいは変わっていないか…!)。そして私はエクスのエレクトラの印象にとらわれることなくアプリシエートすることができるのだろうか?という思いを抱きつつ出かけた最終公演。

前回のひんやりとしたエレクトラに比べて熱かったこと!!!
オーケストラもソリストも押しがよくて迫力が全然ちがった。迫力と言ってもただの大音響ではなく、音が一歩前に出て迫ってくる印象をうけるのだ。美しいメロディーは切ないまでに美しく、ただただ復讐心と憎しみに満ちたエレクトラを表現するだけでなく、亡き父親と彼女自身の失われた日々への鎮魂の祈りのような流れのように感じられた。それはテオリンの歌唱と抑えめの演技にも感じられることで、オケの奏でる音楽と彼女のパフォーマンスが一体となって1つの物語を作り上げていた印象である。
エレクトラが例の長方形の穴があく舞台中央に横たわった姿で作品が始まり、最後は再び同じ位置に同じ姿勢で横たわって終わる。まるで全ては彼女の夢の中で起きた出来事のようにもとれる。

前回も感じたが、クリテムネストラは冷静に自分の置かれた状態を見ている。だからオレストの死が伝えられた時「心の重しを取り除くこの知らせ…それでも完全な安らぎはない…」という意識で力なく笑うのだ(悪魔の哄笑ではない)。
でも、彼女にはアガメムノンを殺したいほど憎んでいた、その理由がある。彼女にしてみればエレクトラが復讐心に燃えるのと同じレベルの憎しみだろう。このオペラのストーリはそこをひとまず考えずにおいて、ということで書かれているのか、それとも「どんな理由があったって、お父さまを殺すなんて、許せないわーっっっっ!」というエレクトラの立場に立って書かれているのか、興味深いところだ。

オレスト役のニキーチン、「え、この役ってこんなに演技ついてたの?」と尋ねたかった(笑)。前回の動かぬ蒼く深い水の印象は声のニュアンスのみにとどまり、父の復讐の強い意志をもって帰ってきた、そしてそれは自らの使命であるという覚悟をうかがわせる演技。また辛い日々を過ごしたエレクトラを思いやる気持ちも表されているのに気がついた(ここの演出巧いなーと暗がりで独り頷きながら感心してしまった)。

ここら辺を過ぎたあたりで不思議よねーと思ってしまうのがエレクトラの言動。王宮に入って行くオレストを黙って見送り、しばらくしてから「あっ、いざというときに斧をわたせなかったー!」なんて、緊張感あふれる音楽の狭間でなんだか拍子抜けな感じがします。

あーあ、あと2~3回観て進化発展の具合を目で確かめたかった舞台だわー。残念ー!

はたと気づいたが、ジョルダンはまだ39歳(若いのう…!)。エレクトラの指揮は初めてだと思うが、ほとんど暗譜でこのレベルに仕上げてくるのはやっぱり凄いなーと。1年半くらい前まではピンとくるものは感じられなかったが、去年のカルメンからオーケストラと共にグワーンと変化してきたように感じる。これから人生経験を重ねて音楽的にどういう道筋を辿るのか、想像するだけで胸がワクワクする。このONPの総監督としてあまり評判のよくないジョエルだが、ジョルダンを音楽監督に据えてくれたことに感謝!




PARTERRE 18 4-6