滑り出しは鼻風邪でもひいているのかと少々心配したほどで、好調な出だしとは言い難かったが、それはまず単純に初めの曲ということと、もうひとつは曲のチョイスにあったのかもしれない。というのはヘンデルとヘロルドという今までのフロレスのレパートリーには見られなかった曲目が並んでいたからである。ヘンデルやヘロルド、続くマイアーベーアは彼の声質にあっているのかどうかは今のところは疑問である。もしかしたらキャリアコントロールの一環として違う分野のものも歌って行こうということかもしれない。今後どのように展開していくか見守りたいところである。オーケストラがバロックな演奏ではなかったので全体的な雰囲気として合わなかったということもあるだろう。
次に良かったのがドニゼッティ。ロベルト・デヴルーなんてマイナーなオペラからのアリア。やはり類い稀なベルカンティストとしてのフロレスの魅力を心ゆくまで堪能できるのはこういうレパートリーである。
出だしこそ不安を感じさせたものの、コンサートが進むにつれて調子を上げてアンコールにはアマポーラ、マパリ、連隊の娘とリゴレットを歌ってくれた。でも、10月に比べて痩せたようだし、一見疲れたような様子だったのがちょっと心配ではある。ヴェジタリアンは疲れた時に何を食べるのだろう???などという疑問まで頭に浮かんだ(笑)。
パリのオペラの観客はけっこうクールでホール全体でスタンディングオヴェーションなんて今まで見た記憶がないが(去年のフロレスのリサイタルや連隊の娘の公演でさえも!)、今日の観客は熱かった!
彼の歌声を聴くたびに「(フィラデルフィアのカーティス音楽院に入学するために渡米することになった時)航空券を買うために車を売ってくれたお母さんありがとう」としみじみ思う。もしカーティスに入らなかったら今頃ペルーでポップスか何かの歌手になっていたかも…。フロレスのいない今のオペラ界なんてワタシにはとても想像できない!!!
Programme:
- Haendel Ouverture d'Alessandro
- "Where'er you walk", air extrait de Semele
- "I must with speed amuse her", air extrait de Semele
- Herold Ouverture de Zampa
- Meyerbeer "Plus blanche que la blanche hermine", extrait de Les Huguenots
- "Popoli dell'Egitto", air extrait de Il crociato in Egitto
- Pablo Luna "Paxarin tu que vuelas", extrait de La picara molinera
- Jacinto Guerrero "Flor roja", air extrait de Los gavilanes
- Jose Serrano "Jota", air extrait de El trust de los tenorios
- Chabrier España
- Verdi "Je veux encore entendre ta voix", air extrait de Jerusalem
- Donizetti "Come uno spirto angelico", air extrait de Roberto Devereux
Bis:
- Amapola de Joseph M. Lacalle
- M'appari extrait de Martha de Flotow
- Ah mes amis extrait de La fille du régiment de Donizetti
- La donna e mobile extrait de Rigoletto de Verdi