どういうタイミングでどのように始まるのか知らなければザワザワしていても仕方がないけれど、ここは聖地バイロイトではないし観客はワグネリアンばかりではない。どのようにすれば静寂の中で演奏を始められるか考えてもいいのではないかと思う。
この場面で既に幕が上がって舞台上の演出があるプロダクションも観たけれど、私はバスティーユのように、暗がりの中でこの前奏にひたるような気分で聴くのが好み。
幕が上がると黒と白、赤でメリハリをつけたセノグラフィが美しく、ブランコを使った演出も無邪気で軽率なラインの乙女をよく表しているが、彼女たちの衣裳が突拍子もなく、雰囲気をぶち壊していて残念(あれをイイ!と言う人いるのか疑問…)。でもあのドレスをローゲが使うアイディアはいいので一概に否定できない。
ニーベルハイムのセノグラフィは秀逸。地下で搾取されつつ怯えうごめく人々と、彼らを支配するかのような黄金と彼らを押しつぶすような振り子の工具の巨大さの対比がバッチリと決まっている。ヴォータンに指輪を奪われて(指を切られるのだ!)呪いつつ逃げて行くアルベリヒの演技が真に迫っている。
このアルベリヒ役のPeter Sidhomがとてもいい役者である。浮かれて驚いて絶望して、憎んで呪って怒って…という感情を大袈裟すぎる演技になる間際のところでとどめているから真実味がでるのだと思う(コメディー・フランセーズの役者のようではないか!)。
そしてその感情をぴったりと歌唱にのせてくるという業師でもある。歌い手としては絶頂期を過ぎているのであろう声そのものには迫力はないが、芝居好きの私はこういうソリストが大好きなのだ。
そしてその感情をぴったりと歌唱にのせてくるという業師でもある。歌い手としては絶頂期を過ぎているのであろう声そのものには迫力はないが、芝居好きの私はこういうソリストが大好きなのだ。
赤いビラは最終日で残り少なかったのかそれほど降ってこなかったような気がするが、今日の席は舞台に近いパーテールだったからかもしれない。
その席のお陰もあってか、ヴォータン役シリンズの声はしっかりと届くものでまずは満足。彼の重すぎない声は好みである。神々の長としての毅然とした様子がうかがえたが、もっと深みが欲しいなと思う場面もあった。しかしこれは演出に大きく左右されるところなので彼自身の責任ではない。
その席のお陰もあってか、ヴォータン役シリンズの声はしっかりと届くものでまずは満足。彼の重すぎない声は好みである。神々の長としての毅然とした様子がうかがえたが、もっと深みが欲しいなと思う場面もあった。しかしこれは演出に大きく左右されるところなので彼自身の責任ではない。
舞台で観るオペラは視覚的印象に大きく左右されるのが当然で、それを考えるとあの衣裳というのはこの神々はまぁ俗物揃いで終焉が近いのも仕方ないでしょ、と思わせるためのものかと前回と同じく思ったのだった。
また前回気になったジョルダンの指揮だが、やはり無難にまとめているような印象で、いまひとつ説得力に欠けるような気がしてならない。
また前回気になったジョルダンの指揮だが、やはり無難にまとめているような印象で、いまひとつ説得力に欠けるような気がしてならない。